2018.09.24 浅葱 斑~白面金毛九尾の狐火玉編~ @ 恵比寿LIQUIDROOM
2018.12.27

中秋の名月に現れた妖狐=浅葱は、アルバム『斑』のレコーディングに参加したゲストミュージシャンをサポートメンバーに迎え、恵比寿LIQUIDROOMのステージに立った。新曲「妖狐の嫁入り」が加わったことで、彼が描く“斑”の世界観はどんな進化を見せたのか──。


“ASAGI solo works”として初めて展開した全国単独公演ツアー“斑(まだら)”の千秋楽から約6ヵ月。その千秋楽の日に発表されたのが本公演の開催だが、その時にはきっと、「まだ半年も先なのか……」と思った人も多かっただろう。やっと迎えた今日この日、否応なしにファンの期待が高まっていることは、ライヴが始まる前のフロアの雰囲気から見て取れる。それもそのはず、今回は、「斑」とは異なったサポートメンバーを率いてのライヴで、ギターにはHIRO(La’cryma Christi/Creature Creature)とyou(Janne Da Arc)、ベースは燿(摩天楼オペラ)、ドラムは淳士(BULL ZEICHEN 88/戦国時代-The age of civil wars-/ex. SIAM SHADE)といった豪華な顔ぶれ。圧倒的な演奏と浅葱が描く和の世界観がどんな融合を見せるのか、期待感が高まるのは当然だろう。

雅楽と琴の音色が流れて幕が開き、鈴を鳴らしながら“妖狐”の世界へと誘う浅葱が姿を表す。初お披露目となる新曲「妖狐の嫁入り」は、ステージ背景に歌詞を映し出しながらの歌唱で、新衣装の白い着物を着た浅葱は、妖艶なアクションでワンコーラス目を歌い始める。場内が、しんと聴き入り始めた頃、静寂は一転、妖狐(浅葱)の高笑いとともにスモークが吹き出し、さながら、狐が人間たちを煙に巻くような場面転換が起こる。「頭振れー!」と叫ぶ浅葱は、何かが憑依したようにスイッチが入り、白い羽織袴姿のサポートメンバーが叩き出す圧倒的な激しいサウンドを操り始め……。まるで一遍の絵物語を見ている感覚に陥った『妖狐の嫁入り』が終了すると、会場は、「浅葱ー!」というオーディエンスたちの熱狂的な声に包まれた。


「今宵は中秋の名月。月夜に出でよ」という浅葱の一言を挟み、続く楽曲は、アルバム『斑』1曲目に収録されている「天地(あめつち)行き来る小船」そして「月界の御子」。圧巻だったのは、HIROの超絶早弾きソロによる間奏の間、照明が落ちた舞台中央で扇子を手に舞う浅葱が、扇子を手に、メロディアスな“浅葱節”を舞う姿。シルエットだけでこの空間を支配する様にゾクッとしてしまう。視覚・聴覚・すべての感覚を刺激されながら、深い森の中に足を踏み入れていくような感覚すら覚えたからだろう。

『斑』を提げたツアーでは、アルバムの曲順通りに楽曲を並べたセットリストでライヴが進んだが、今回は『妖狐の嫁入り』で幕を開け、“妖狐”の世界と“斑”の世界が融合していく。
以前のレポートにも記したが、アルバムの曲順通りにライヴを進めるということは、かなり挑戦的な試みだと思う。事前にセットリストが予想できることで、観客たちは一つの興味を失うのではないかと感じるアーティストは多いものだ。そう考えると、手の内を見せることはまったく問題ではなく、むしろオーディエンスを飽きさせない自信があるということ。
その『斑』ツアーを大成功のうちに終えて迎えた今回は、新曲が加わったことでより一層その世界が広がる。そして衣装やサポートメンバーのリニューアルがある。同じ世界観を違った角度で楽しめることは、実はありそうでなかなかない。なんとも贅沢な体験ができると思うとワクワクしてしまう。


「隠桜(おぬざくら)」までの前半パートは、静寂とそれを切り裂くような激しさ、その二面を併せ呑んだような展開だった。一呼吸置いた後、浅葱の「今宵は我ら狐の宴じゃ。皆の者、全力で盛り上げようぞ!もっともっと声を上げ!さあさあお前たち、愚かな人間たちを招き入れ、騙されるのかみやぶるのか。楽しみよのう。いざ参れ!」という曲紹介を受けて始まった「白面金毛九尾の狐火玉」ではトリッキーな展開とサウンドを、客席のファンたちも浅葱と同じ扇子を振りながら楽しんでいる。照明も、これまでの楽曲の時より少し明るめで、サポートメンバーの存在感もより目に入るようになっていく。華麗な弦さばきで華やかな音色を聴かせるHIRO、サウンドの支柱を支えるギターを弾きながらも魅せるところでしっかりと魅せるyou、抜群の疾走感と破壊力を誇る淳士のドラムとそれをがっしりと支える燿のベース。そんな彼らを呼ぶ男性ファンの声もあったのが今回の公演の特徴でもあった。

そして、浅葱のソロ公演での特徴としてもう一つ上げられるのは、歌い手でありながら、浅葱は語り手としての役割も担っていること。『大豺嶽(おおやまいぬだけ)~月夜(つくよ)に吠ゆ~』の前に「楽しんでおるか、もっともっと我に声を届けよ!月夜に吠えろ!」と客席を煽り、『冬椿~白妙の化人~』に入る前は「何百、何千年と生きようとも、心が満たされねば我らの魂は凍てつくばかり。安らぎなど、どこにもありはせぬのだ。春など夢のまた夢…」との語りが入る。もちろん、楽曲だけで世界観を表現する力があるのだが、淡々とした静かな語りがあることで一瞬頭がクリアになり、次の曲を体に入れる準備ができるような気がする。浅葱の公演スタイルにはとてもしっくりくる構成で、浅葱はさすが、どうしたら自分が描き出す世界観をより伝えることができるかを熟知している。


さらに、後半にはうれしいサプライズが!メンバー紹介を織り交ぜながらコールアンドレスポンスを入れた『鬼目羅(きめら)』。メンバーの自己紹介ソロなどでひとしきり盛り上がったのち、「ここでスペシャルゲストの登場です!さあ、呼んでみようかな。皆の者、大きな声で呼んでみよ。DのRuiza、Tsunehito、HIDE-ZOU、HIROKI!」とDのメンバーを呼び込み、「さあ皆の者、ここであることに気づいてはおらぬか?ステージ上、我らは今何人じゃ?9人だな。九匹の狐ということで、ステージ上、この9人に声を届けよ。いいか?いざ参れ!」と呼びかけ、コールアンドレスポンスをさらにさらに盛り上げていく。黒の羽織袴姿で狐のお面を頭につけたDの4人も大きな声を出して、中秋の名月に繰り広げられる宴を楽しんでいる。この賑やかな光景に客席が盛り上がらないはずはなく、頭を振る者、手を振り上げる者、楽し見方は様々ながらも場内の一体感は頂点に達した。


Dのメンバーがステージを去り、宴のあとの静寂を染め上げたのは『雲の通ひ路』。ここからの終盤パートでは、琴の音色と詩吟のような歌唱と太鼓の音色が印象的な『妖刀玉兎』、疾走感の映える『物の怪草子』と、浅葱ソロならではのお伽草子のような楽曲が続き、いよいよ最終曲『アサギマダラ』へ──。前回のツアーとは違う観点から、“命”を訴える言葉を浅葱が語る。

「古より息づく、我ら妖は、増え続ける人間どもに憎まれ、うとまれ、殺され、やがて地の果てへと追いやられた…
恨みも晴らせずに命を落とした者も数しれず。狐や鬼、そして蝶もまた有らぬ世、次の世を目指す」──。

自身と同じ名前を持つ、ボロボロになりながらも長い長い旅を続け命をかけて飛ぶ蝶をモチーフに、命や生き様を描くこの楽曲は、観点を変えることで届き方が違うのだということを、今回の公演が証明してくれた。時代が変わっても、長く長く愛される楽曲になっていくだろうことも知らしめた。

 
『アサギマダラ』を歌い終え、深々と頭を下げた浅葱は、するすると引かれる緞帳の奥に姿を消した。今回も、公演はアンコールなしで終わったが、終演後には次のソロ公演の告知が。
浅葱が次に姿を現すのは、2019年1月13日/品川インターシティホール。“浅葱”新春特別企画 二部制単独公演と銘打ち、二部構成で『斑』の世界の中心に座す“月界の御子”が、昼の顔と夜の顔を見せる。新曲「もののあはれ」も当日発売が決定。この世界を生み出し、いくつもの顔を見せ、そして自身がこれからも長く長く歌い継いでいくであろう『斑』。果たして次はどんな景色を見ることができるのだろうか。

TEXT:須田真希子  PHOTO:TAKUYA ORITA  


2018.09.24 浅葱 斑~白面金毛九尾の狐火玉編~ @ 恵比寿LIQUIDROOM
-SET LIST-

-SE-
01. 妖狐の嫁入り
02. 天地(あめつち)行き来る小船
03. 月界の御子
04. 畏き海へ帰りゃんせ
05. 花雲の乱
06. 隠桜(おぬざくら)
07. 白面金毛九尾の狐火玉
08. 螢火
09. 大豺嶽(おおやまいぬだけ)~月夜(つくよ)に吠ゆ~
-SE-
10. 冬椿 ~白妙の化人~
11. 鬼眼羅(きめら)
12. 雲の通ひ路
13. 妖刀玉兎
14. 物の怪草子
-SE-
15. アサギマダラ

-SUPPORT MEMBER-
Gt : HIRO (La'cryma Christi / Creature Creature)
Gt : you (Janne Da Arc)
Ba : 燿 (摩天楼オペラ)
Dr : 淳士 (BULL ZEICHEN 88 / 戦国時代-The age of civil wars- / ex.SIAM SHADE)


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「妖狐の嫁入り」GUEST MUSICIANS
Gt : HIRO (La'cryma Christi / Creature Creature)
Gt : you (Janne Da Arc)
Ba : 燿 (摩天楼オペラ)
Dr : 淳士 (BULL ZEICHEN 88 / 戦国時代-The age of civil wars- / ex.SIAM SHADE)
鼓 / 太鼓 : 真矢 (LUNA SEA)
琴 : Tomoko (HEAVENESE)

【通信販売】
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“浅葱” 新春特別企画 二部制単独公演
昼の部:斑 ~和菓子・うさぎや編~
夜の部:斑 ~物の怪草子編~


2019年1月13日(日) 品川インターシティホール
【チケット】
昼の部 ¥3,530 (税込D代別)
夜の部 ¥5,370 (税込D代別)
二部通し券¥ 8,888 (税込 各部D代別)
※二部通し券は各部毎ご購入の方より優先的に前方座席となります。
※二部通して同じ座席となります、予めご了承下さい。
※全席指定

当日は未発表曲音源「もののあはれ」の会場限定販売あり!

二千十九年一月十三日発売
「もののあはれ」
GOD CHILD RECORDS/GCR-176/1song CD/¥700
会場、通販限定販売
※会場販売:一月十三日品川インターシティーホールより販売開始
※通信販売:一月十五日よりRosen kranzにて通販受付開始


【開場/開演】
昼の部 13:15 / 14:00
夜の部 18:15 / 19:00

【内容】
昼の部:小規模非電子的演奏会 & 御子様による世を偲ぶ仮の姿での和菓子贈呈
夜の部:御子様による妖怪退治(物の怪草子)衣装での演奏会

【特典会】
昼の部、夜の部共に終演後物販購入者対象特典会(チェキ & 握手会)有り
※詳細近日発表

【サポートメンバー】※二部共に出演
Gt : HIRO (La'cryma Christi / Creature Creature)
Gt : you (Janne Da Arc)
Ba : 人時 (黒夢 / Creature Creature)
Dr : Sakura-櫻澤泰徳 (gibkiy gibkiy gibkiy / Rayflower / THE MADCAP LAUGHS / ZIGZO)

[一般発売日] 2018/11/24 (土)~
イープラス:http://eplus.jp/
チケットぴあ:0570-02-9999(Pコード:131-343)
ローソンチケット:0570-084-003(Lコード:73835)
※3歳以上チケット必要

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