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2017.06.11

昨年10月にリリースされた『Wonderland Savior』は、“不思議の国のアリス”を題材にしたコンセプチュアルなアルバムであり、Dの豊かな創造性を改めて証明する作品だった。だからこそ、次に届けられるマテリアルがどのような内容になるのか、ポジティヴな意味で予想できなかったが、ここに完成したシングル『Dark fairy tale』(6月28日発売)で描かれていたのは、妖精界と人間界の間で起こる出来事を綴るという、これまでにない新たな物語だった。メンバー自身も確かな手応えを感じているようで、実際に音源に耳を傾けてみると、早くも続編が気になってくるほどだ。

――『Wonderland Savior』という素晴らしいストーリー・アルバムの次にどんな作品を出してくるのか、ファンはことさら注目していたと思うんです。表題曲である「Dark fairy tale」は、4月23日のZepp Tokyo公演で初披露されましたが、まず今回はなぜ妖精(fairy)を題材に取り上げたのか、その経緯からお話をお願いします。
ASAGI:森が教えてくれました。今までも森が背景にあるような楽曲をたくさん打ち出してはきていますけど、プライベートでもよく森に癒されに行くんですね。そのときには同時に、必ずインスパイアされるものがあったり、イメージが広がったり、森は様々なパワーをくれるんですよ。だから、以前から採り上げたいテーマではあったんですが、今回の「Dark fairy tale」のイントロとギター・リフを考えたときに、小さな妖精王の大きな羽の羽ばたきが見えたんです。そこから世界観を構築していって、本格的に制作に入っていったんですよ。タイミングとしてはまさに今だなと。
――つまり、妖精ありきではなく、まず曲の一部分のアイデアから浮かんできたんですね。ただ、そこには不思議な必然性も見えてきますよ。リリース時期としても、ちょうど夏至の頃ですから。
ASAGI:そうなんですよね。「妖精王」はもともと自分の中にあったテーマだとは思うのですが、今とリンクした感じですね。実際に曲作りをしていたのは1~2月だったんですけど、偶然にもリリースが6月ということになって。人間界と妖精界が一番近づく夏至の日にライヴを行うことにもなったり、その後も夏にツアーがあることも、すべて必然的なものとして受け止められるんですよね。
――今回の『Dark fairy tale』で描かれるストーリーは、人間界と妖精界との間で起こる出来事ですが、まずチェンジリングというものが重要な鍵になってくる。この解釈の仕方にもDならではと言える世界が表れていますね。
ASAGI:そうですね。妖精の歴史や伝承を辿っていきながらも、自分が描くのであれば、やっぱりオリジナリティを追究していきたい気持ちはありますからね。だから、たとえば、そのチェンジリング(取り替え子:人間の子と妖精の子を取り替えること)にしても、一般的には妖精がいたずらで行うものとされている。でも、そこから起こる悲劇なども絶対にあるはずだと思ったときに、今回の物語がどんどん広がっていったんですね。今回の主人公の一人である妖精王は、いたずら的なものではなく、人間を愛するがゆえに、チェンジリングを行った。そういうストーリーがまず見えてきたんですよ。では、なぜ人間を愛するようになったのか。それを「Bluebell wood」で表現しようということを同時に思いついて。
――妖精と言われて思い浮かべるものは、どちらかと言えば楽しい要素のほうが多いと思うんです。ところが、曲名に“Dark”と付されていることからもわかるように、むしろ正反対の暗い世界が描かれていく。
ASAGI:そうですね。その時々で打ち出したいものって、そのときのバンドの状況や環境、自分の生活や精神状態、様々なものが影響してくるんですけど、Dの表現の基盤にはダークというものがあると思いますし、今回はいわゆるDの真骨頂というような部分も如実に表れていったのかなという気はしますね。
――まずは「Dark fairy tale」の曲と歌詞の概要が出来上がり、それをASAGIくんがメンバーに伝えたという流れですか?
ASAGI:そうですね。その時点では、「Dark fairy tale」が表題曲としてあって、こういうストーリーのものをこれから打ち出していきたいと思っているという話を伝えたんです。
――いくつか候補となる曲があったわけではなく、その時点でアイデアを形にしたこの1曲を、すぐさま表題曲にと思えたということは、確かな手応えがあったということですよね。
ASAGI:確かに手応えはありましたね。前回の『Wonderland Savior』で表現した“アリス”の世界観は、ずっと自分の中にあったものが一気に放出された感じだったんですね。今回の妖精というテーマは曲から受けるイメージが生まれるキッカケでしたけど、やはりかねてから思うことがあった題材だけに、溢れ出してくるものがあったし、これは広げられるという確信もありました。
――“アリス”の不思議なファンタジーとはまったく異なる世界ですし、その落差も大きなものがありますね。
ASAGI:そうですね。その激しい落差もありつつ、実は夢の世界ではつながっている……というのは、そのキッカケになるようなことは、『Wonderland Savior』の制作の段階で起こっていたんだなと思えるんですよ。振り返ってみると、「海王鯨島 亀毛海浜夢珠工場」の歌詞の一節に<妖精王の粉>という歌詞が出てくるんですよね。妖精王の粉というものが、すでに“アリス”の世界に存在していた。
――つまり、今後、『Wonderland Savior』とストーリーがつながってくるようなこともあり得るわけですね?
ASAGI:あり得ますよね。そこは実際にどうなっていくかわかりませんが、夢の世界という意味でも、不思議と自分の意識とは別のところで、生まれてくるものはあるんですね。
――そこがまた面白いところですよね。そんな「Dark fairy tale」のデモとストーリーが届けられたとき、他のみなさんはどのような印象を抱いたのでしょう?
Ruiza:まずワクワクしたんですよね。活動休止から復活して以降、“アリス”の世界観でシングル、アルバムを作ってきましたけど、次の新しい扉を開けたような印象がありましたね。曲そのものもすごくカッコいいし… 何かスッと身体に入ってくる感覚があったんですよ。だからこそ、イメージも膨らませやすくて。
Tsunehito:アルバムで三部作の最終章を迎えた“アリス”の世界観にも、今回の新たな世界観にもファンタジックな要素はあるんですけど、「Dark fairy tale」はタイトル通りまさにダークだし、重く深いシリアスなテーマがあるんですよね。ホントに新章という感じがしましたし、そういう新しさを自分でもどんどん組み入れていきたいなという気持ちになりましたね。
――それはベーシストとしてですか?
Tsunehito:それもそうですし、カップリングの曲を作るうえでもそうですね。今回は表題曲をいただいてから、それを作り進めていく中で、僕もいくつかカップリング用の曲を作っていったんですけど、ASAGIさんとメールで「今、Dはもっと世界観を深く追究する時期に突入しているんだよね」ってやりとりもしてたんですよ。だから、自分の中でもより深く、いろいろと考えて作った一つの成果が「慈愛の虜囚」だったんですね。
――より意識的に向き合ったわけですね。そこはまた後ほど詳しく伺いましょう。HIROKIくんはどうでした?
HIROKI:ASAGIくんからデモをもらったときに、すごく壮大なストーリーが展開されるんだろうなって思いましたね。実際にイントロの段階で新章を感じましたし。だから、アレンジとかもいろいろ苦労しながら、プロデューサーの岡野(ハジメ)さんとも相談しつつ考えていって。ドラムに関して言えば、今回は音数が少ないし、テンポもそんなに速くない分、1音1音をより説得力のあるものにしなければいけないと思いました。
HIDE-ZOU:デモを聴いたときは、僕もワクワク感もありましたし、素直にカッコいいなと思いましたね。作品全体の話にもなっちゃいますけど、妖精をイメージさせるようなベルの音も凄く好きで……ここまで一つの世界観のためにイメージして音を作り上げることですごく映像も見えてくると思いますね。Dとして、新たな世界観やストーリーができた嬉しさもありますね。
――これまで作り上げてきた作品での経験則があるからこそ、より充実した内容に仕上げられる側面もあるでしょうしね。
HIDE-ZOU:そうですね。サウンド的にも実験的なことをさせていただいたんですよね、プロデューサーの岡野ハジメさんにアドバイスをいただきながら。岡野さんは引き出しが多くて、何より深いんですよね。音色一つにしても、楽曲の世界観にマッチするセレクトをすごく理解してくださっていて、一緒に作り上げてという気持ちになれるし、勉強になることがたくさんあるんですよ。今回の作品を通しても、得たものはすごく多いと思います。
――それぞれプレイヤーとして、新たな発見や自分なりの挑戦もあったでしょうね。
Ruiza:僕は音作りをしているときに、たとえば、キックの8分のドドドドドドってところ、その上で鳴るベースのフレーズに対して、下は二人の音色に任せて、その分、ギターで出せるエッジを考えてみようとか、岡野さんとも話しながら進めたりもしましたね。
Tsunehito:「Dark fairy tale」はシーンがどんどんドラマティックに変わっていく構成なので、その場面の移り変わりをベースでも見せられるようにしたいなというのは、デモをもらったときから考えてたんですよ。なので、Aメロなんかは、リズミックなフレーズのパターンにしたんですけど、サビでは……自分のフレーズ作るときにわりと上のほう(高い音)で弾くことが多かったんですけど、ここではキックもドドドドドドって2バスを踏んでたり、曲のテーマ的にもより深いというか、重い部分みたいなものもドシッと出せたらいいなと思いながら、Aメロとはまた違うパターンを当てはめていって。その辺りは上手くいったなぁと思ってます。
HIROKI:そのサビの8分のツーバスのところなんですけど、このテンポ感が意外と難しいんですね。速いテンポのときと比べて、左右の音のバランスが如実に出るんですよ。そこはすごく気をつけながら、なおかつ、しっかり1音を鳴らす。そういったところでも、グルーヴ感というのが上手く出せたんじゃないかなと思います。
HIDE-ZOU:「Dark fairy tale」は展開がいろいろ変わっていく中での一貫性というのも大事だと思うんですよ。ヘヴィでありながら、キャッチーでもあることは、この曲のギターを弾くうえで鍵でもありましたね。結果として、サウンドもフレーズも含めて、すごく聴きやすい仕上がりになったと思います。
――Aメロのバックで、ギターの裏打ちのカッティングが出てくるじゃないですか。これはドラムとベースのリズムに対して目立つフレージングでもありますが、単にインパクトだけを狙った組み合わせではないですよね?
ASAGI:そうですね。そのギターのアプローチに関してもデモの段階で入れたんです。みんなが言っていたような場面転換が欲しかったし、妖精感というものを表現するために必要だったんですよ。裏拍のカッティングは<妖しく舞った>といった歌詞ともリンクしてくるんですけど、光り輝いている感じにマッチしているのかなって。
――ええ。次の「Bluebell wood」の内容にもかかってきますが、人間界と妖精界の時間感覚の違いまで表しているのではないかと、深読みしたくなる構成でもあると思うんですよね。
ASAGI:確かに。それはもうぜひ深読みしてもらいたいですね(笑)。時間の流れの違いみたいなものは、特に今回は表現したかった部分ではありますから。
――歌そのものに関しても、妖精王のイメージがまず難しいと思うんです。仮に性別は男だとしても、妖精に年齢という概念が当てはまるのかどうかもわかりませんし、声が高いのか低いのかということも含めて、ホントに想像するしかないわけですからね。
ASAGI:そうですね。やはり新章でもあるので、王としての威厳をどう表現するのかとか、妖精王が歌っているイメージの作り込み方には、最初は結構時間がかかりましたね。これでいこうとなってからは、何も迷いなくやれましたし、最終的には、これしかないなというところに辿り着いたと思います。妖精王の歌というものを追求している中で、これまでと少し違うなぁと思ったのは、メロディとメロディのつながり方が、さらに伸びやかになったかな、というのはありますね。滑らかに聞こえるようにというのは意識したところですね。構成の面で言うと、冒頭の部分はウィスパーでいきたいなというのは最初から決めてたんですよ。妖精の囁き。そこから大きな世界観へという流れですね。
――<Once upon atime>という始まりの一節も含めて、この導入部だけで、その後に展開される物語への興味を惹きつけますね。一方で「Bluebell wood」は先ほどASAGIくんから話があったように、妖精王が人間界に親しみを持つ経緯が描かれている。
ASAGI:はい。この世界観としては、もともと妖精はチェンジリングで人間界にいたずら的なことをしていたり、逆に人間は自然を大事にしない、環境破壊が妖精によくない影響を与えている時期があったんですけど、妖精王のチェンジリングによって、人間界の王の不治の病に冒されていた子供を救うことになった。そのことで人間界と妖精界の間で深い平和協定が結ばれるんですが、そこに至るまでに、妖精王が人間に親しみをもつキッカケになった一人の少女がいる。その少女との物語を「Bluebell wood」で描こうと思ったんですよね。
妖精王と少女が出会ったシーンを想像したとき、ブルーベルの花のカーペットが森に敷かれている、すごく美しい景色が思い浮かんだんですよ。それと同時にイントロと“Hah”っていう声も出てきたんですね。ここはメロディも動かないですし、まさにパーッと平らに広がり続ける、花のカーペットみたいなもの表現するヴォーカリゼーションなんですよ。イントロなどのベルの音に関しても、“Bluebell”という花が、ベルの形に似ていることからそう呼ばれているものなので、花が鳴っているようなイメージから入れたんですね。あとは、妖精=ハープのイメージもあったので入れていますね。
――ゆったりとした3拍子のリズムで進んでいくところも、この曲のあるべきポイントなんだろうなと思いますね。妖精と人間の少女が出会う、微笑ましい光景の描写の一つでしょうし。
ASAGI:そうですね、仰る通りです。
――ところで、人間と妖精の時間感覚の違いというのは、一般的によく言われているものなんですか?
ASAGI:どうなんでしょう? 世界中の妖精の伝承をすべて調べたわけではないんですが、この物語における、妖精界の1日が人間界の10年というのは、どこからか引用したものではなく、僕が設定したものですね。だから、<また明日会おう>という台詞が出てきますが、この“明日”の意味も、当然、人間界と妖精界では違ってくる。つまり、ここで少女が初めて会ったときに何歳だったかという細かい設定はとりあえず置いておくとしても、その後、たった7回ぐらい会った時点で、彼女にはもう寿命がきてしまうことになる。少女と出会ってからの妖精王の七日目に…。
さらに言えば、僕が考えるその儚さは、ファンの子との関係も表現しているんですよね。たとえば、僕たちが作曲にかける時間はすごく膨大なわけですけど、最初に聴いてもらうときには、だいたい5分ぐらいですよね。しかも、時間は日々流れてはいますけど、バンドとお客さんが直接会える時間は、すごく短いわけじゃないですか。たとえば、一度ライヴが終われば、次回まではどれぐらいあるのか、ということですね。つまり、双方の時間の流れが全然違う。もちろん、音楽そのものは生き続けるし、普段から聴いていますという声は嬉しいんですが、実際に会える時間を考えると、すごく儚い。あと何回ライヴができるのか、あと何回会うことができるのか。それを踏まえたうえで、共有できる時間を大事にしていきたいという想いと愛も、この「Bluebell wood」には込めましたね。
――よくわかります。だからこそ、<また明日会おう>の一言がものすごく切ないですよ。当初は時間の捉え方の違いを少女は理解していないですし。
ASAGI:そうなんです。妖精王としては、待たせ続けるのもかわいそうだなと思うし、最初は絶対に(少女は自分のことを)忘れるはずだと思ったんですよね。その頃はまだ人間というものに、あまり深く触れていないから。でも、少女は10年間待ち続けた。そこに妖精王は心を動かされて、物語は大きく動いていく。「君たちとは時間が違うから、次は10年後ね」と告げるのも逆に残酷なのかなとも思って、最初はそう言わずに別れることになるんですけど、だからこそ、再会するドラマがすごく感動的なんじゃないかなって。
――そこで信頼関係が生まれる。妖精王からすれば、人間が信じられるようになるという大きな転機ですもんね。
ASAGI:はい。そしてBluebellの花言葉は「変わらない心」なので、まさに妖精王と、この少女そのものなんです。Dとファンもそういう関係でいれたら素晴らしいですよね。
HIDE-ZOU:妖精王の側面に触れられる意味でも重要ですし、すごくスケールの大きさを感じたんですよね。ダーク・ファンタジーではありながら、この曲ならではの立ち位置がある。そこにすごく美学、芸術性を感じますね。もちろん、曲としてすごくいいですし、サウンドも今までなかったような雰囲気があると思うんですよ。実際にレコーディングにおいても、イントロでは指弾きしてみたり、Ruiちゃんのギターとの絡みによる不思議な音色が、より効果的なものになっていると思いますしね。
HIROKI:イントロ部分から惹きつけられますし、バンド・サウンドが入ってからの展開とかもすごくいい流れになっていて、「Dark fairy tale」とはまた違った壮大感があるんですよね。時間の流れを感じさせるうえで、3拍子も効果的ですし、スネア・ロール部分も何パターンか試したりしました。
Ruiza:僕も最初に曲を聴いて、歌詞を見たときに、すごくグッときたんですよ。だからこそ、それを上手く音で表したいなと思いましたね。季節が出てきているところもすごく好きで……人の一生とは何なのか、そういった事も考えてみたりもしましたね。
Tsunehito:見えてくる景色の色味というか、花が広がっているキレイな部分だったり、温かさを感じる部分だったり、表題曲とのいい意味での対比が、すごくいいなぁと思うんですよね。この「Bluebell wood」で妖精王の人となりのようなものを知ることで、「Dark fairy tale」にもより深く入り込める。親近感が沸くというか……何と言えばいいんでしょうね。
――より身近なものにも思えてくるかもしれませんね。
Tsunehito:妖精王とその中の愛の部分も感じられますし、表題曲の次にこの曲が来るという流れもベストだ と思いますし。
――そうですね。限定盤B-TYPEに収録される「慈愛の虜囚」はTsunehitoくんの作曲ですが、先ほどの話のように、「Dark fairy tale」を受けて書いたということですね。
Tsunehito:そうです。自分の中でも、もっともっと深く世界観を追究することを意識していたんですけど、たとえば、冒頭のシンセの不穏な感じ、音の重なりみたいなものの響きはその一つですね。本イントロの前の白玉のコードの響きにしても、これだというものを探すまでに何個も何個も試して。それから、これは今回のどの曲にも言えるんですけど、音を詰め込み過ぎないこともすごく意識してたんですね。だから、「慈愛の虜囚」では、イントロはユニゾンでガツガツした音像で見せるんですけど、Aメロは、それこそ3人の竿隊はジャジャッ、ジャジャッて、かつてないほど音数を少なくしていって。メロディのいろんな箇所も、ASAGIさんと相談しながら調整していきましたね。もちろん仕上がりには満足してますし、何よりこの作品に当てはまる曲になってよかったなぁと思います。
ASAGI:そうですね。この曲はサビのメロディもアレンジしたのですが、とても感情が入りました。
――実は最初に聴いたときに、Tsunehitoくんが作曲したものとは思わなかったんです。今の話を伺って、それは当たらずしも遠からずだったかなとも思いました。
Tsunehito:新章ということで、自分の中でも新しいものが出た感じがしますね。意識して挑戦していったものを、曲の中に入れて成功させることができたなと思いますし。それから、これは余談ですけど、ファンクラブのキャラクターで、メンバーが動物に扮していたりするんですけど、俺はチュネズミっていうネズミなんですよ。だから、B-TYPEのジャケットを見たときに、一人ほくそ笑んで(笑)。
ASAGI:あっ、そっかあ!じゃあ、このジャケットをB-TYPEにしてよかったね(笑)。
――偶然にもそういう形になったわけですね(笑)。「慈愛の虜囚」のデモが上がってくる前から、ストーリー自体は考えていたと思いますが、実際の歌詞は、曲から受けるイメージに照らし合わせながら、言葉を紡いでいったんでしょうね。
ASAGI:はい。「Dark fairy tale」の時点で、ストーリーが出来上がっているからこそ、この曲を聴いたときのリンクの仕方がすごくよくて、光のない洞穴とか、地下的なイメージが自然に湧いたんですね。そこから、これは妖精王の息子の心の叫びにしようと思って、歌詞に取り掛かったんです。とはいえ、ただ醜いだけの描写ではなく、彼が人間界でなぜ醜くなってしまったのか、その嫌な背景みたいなものも取り入れて、なおかつ、妖精王には妖精王の理由があったという、両方の目線から物語を書いてみたかったんですね。
――純真な存在であるはずの妖精が醜くなってしまった背景……それはASAGIくんがこれまでの作品でも訴えてきた、環境の問題や人間社会そのもののネガティヴな部分に焦点を当てることにもつながってきますよね。
ASAGI:まさに仰る通りですね。人ではないものを題材にすることによって、人を見つめ直すというか、そういったアプローチの仕方は自分ならではのものなので、それが今回も自然に出たのかなと思います。環境汚染だったり、人間同士の争いだったり、そういったものの影響を表現したかったので、MVの打ち合わせでも、争っているような絵画的なものや歴史を感じさせるようなものを入れて欲しいという話を監督にはしたんですよ。
――楽曲のアレンジに際しても、この曲ならではのアプローチが当然出てきますよね。
HIDE-ZOU:そうですね。僕もこの曲はTsuneらしさがありつつ、また新たなものが際立った印象があったので、新鮮な気持ちでアレンジしていけましたね。Ruiちゃんとの絡みにも、今までなかったようなエッセンスを感じてもらえたらと思いますし。
Ruiza:デモを聴いたときに、すごくカッコいい曲だなと思いましたし、新鮮なところもあるし……ここでは醜くなってしまった妖精王の息子が主人公ということもあって、少し攻撃的な面を感じられたら面白いのかなと思って、場面を想像して、16分のフレーズを取り入れてみたり、駆け上がるフレーズを入れてみたりもしましたね。
HIROKI:僕もすごく展開が斬新だなと思ったんですよ。デモの段階でもTsuneが作り込んできてくれてて、それをどう昇華していくか、すごくやりがいのある曲でしたね。サビに出てくるゴリ押しのツーバスなどにも、展開の面白味がすごく出ているなと思いますし。重い音に絞ったのも効果的になったんじゃないかなと思います。歌が伸びやかに聞こえるような演奏も心がけましたね。
――ここでは妖精王の息子のみならず、チェンジリングを通して人間界に生息していた妖精たちも小鬼(ゴブリン)になっていたことが描かれていて、彼らは妖精界に復讐しようと試みる。ただ、どれほど多くの小鬼が生まれていたのか、それまでにも反逆的な行為に至ることはなかったのか等、いろいろな背景まで考えさせられますよね。
ASAGI:そうですね。(小鬼(ゴブリン)は)結構な数なんです。妖精王のチェンジリングは、人間界の王の子供を救うためのものでしたけど、妖精王の近くにいなければ、その深い事情や詳しい背景は妖精界全てには伝わらないんじゃないかと思ったんですね。ただ取り替えたという事実だけしか知らない妖精たちにとっては、王がやっているんだから、自分たちも真似して大丈夫だろうという感覚があったんじゃないかなと考えたんです。人間界で言うならば、たとえば、偉い人だったり、著名人だったりが何かを行い、その本来の意図や目的などとは離れて、それ自体が一時的なブーム的なものになることもありますよね。
――確かに、思いもよらぬ広がり方をすることはあるでしょうね。そして、人間界を助ける目的だったチェンジリングが、時を経て悲劇を生むことになる。それが「Who killed fairy?」でより具体的に描かれていますが、これはRuizaくんがストーリーを元に作った曲ですね。
Ruiza:そうです。もともと“Dark”という言葉もありましたし、今回の世界観に合うものというのはもちろん考えていたんですけど、何かスリリングな感じ、ドキドキする感じのものを作りたいなと思ってたんですね。だから全体像としては疾走感とかも意識しましたし、オンコードを入れて展開の節目でドキッとさせるような音使いにしてみたり、そういうところはすごく考えましたね。
――サビの言い回しやタイトルは、『マザーグース』の一篇である“Who Killed Cock Robin(誰が駒鳥を殺したの)”を意識した表現にしたそうですが、このタイミングでASAGIくんから、(『不思議の国のアリス』との関連もある)『マザーグース』が出てきたことも興味深く感じますね。
ASAGI:そうかもしれませんね。他のメンバーが書いた曲に歌詞をつけることは、自分の頭の中の世界にある、様々な扉や、引き出しのどれを開けるかということだと思うんですよ。だから、曲に応じては、その曲を最大限に表現すつために、普段は自分が開けないようなところを開けたりもする。この曲に関しては、イントロを聴いたときに、駒鳥が、妖精が殺されてしまう現場や、妖精界で起きている不吉なことを見て、妖精王に知らせるために猛スピードで必死に羽ばたいている景色が見えたんですね。そこで『マザーグース』で駒鳥の話があったなと思い出して。もちろんそれとは違う話なんですけど、駒鳥をキーワードにして、「Who killed fairy?」というタイトルにもしたんですね。
――妖精王の息子は、自分をなぜこんな立場においたのかという思いで、父に刃を向けようとする。ところが最終的には自害という道を選んでしまった。それ自体が悲劇なわけですが、一つの物語としてだけではなく、やはりここにもASAGIくんなりの主張が潜んでいるのではないかと思えるんですよ。
ASAGI:そうですね。妖精王にしてみれば、もちろん悲劇を生むつもりもなく、人間界を救うためのチェンジリングだったわけですけど……悲劇には必ずしも完全な悪役がいるわけではないんですよね。どちらの目線から見るかによっても背景は異なりますし、現実社会でも当てはまることはたくさんあると思うんですよ。結局のところ、相手のことを理解してあげようという気持ちが、争いを少なくすることにつながるんじゃないかなと思うんですね。この物語を通して何か感じてもらえれば、嬉しいですね。
――一方的な思い込みが争い事を招くことは、歴史的にも数多いですし、何か事が起こったときに、ふと冷静に考えるキッカケになるといいですね。物語としてもある種のクライマックスですし、聴き応えのある曲に仕上げることは、なおさら必須だったと思うんです。
Tsunehito:やっぱり、この曲も今回のシングルの中で当然必要なものだったんだなというのは、仕上がってみて、より思うんですよ。実際にアレンジの段階でも、曲のシリアスな部分だったり、曲調の疾走感だったり、緊張感のある音も踏まえつつ、自分のベース・プレイを考えましたし。だから、たとえば疾走感という点で言えば、ただまっすぐにバーっと速いフレーズを弾くのではなく、自分のベースのうねりみたいなもので、より勢いみたいなものが出せればなと思って作っていきました。
HIROKI:実際にテンポ的にもそんなに速くないんですけど、だからこそ、抑揚をつけることで、サビの展開をより強調させる演奏を心がけましたし、そのうえで疾走感もすごく大事にしました。ライヴ感的なものにもすごく気を配ってレコーディングしましたね。
HIDE-ZOU:ギター的にもそうなんですよね。刻みも多いですけど、ただ刻むのではなく、疾走感を失うことなく、要所要所で音を伸ばしたり、さらにRuiちゃんとのバランスを考えたり。全体的な考え方としては、引き算だったかもしれないですね。ライヴはこれからですけど、すごく気持ちよく演奏できるんじゃないかな。
――ライヴならではの聴かせ方も出てきそうな予感がしますね。さて、今回のシングルで発表されるのはこの4曲ですが、妖精王は不老不死ですし、この物語の続編がありそうな気がしてならないですよ。
ASAGI:そうなんです。実は8月29日(ツアー・ファイナル:東京・赤坂BLITZ)にプレゼントする曲を制作中なのですが、ちょうどこの「Who killed fairy?」の最後の1行からつながる内容なんですね。嵐の中で、妖精王が幻の亡児、自分の息子を含む死んでしまった子たちと一緒に踊っているようなイメージなんです。とはいえ、それは妖精王にしか見えていない幻で、そのまま嵐に消えていってしまう。だから、その後もどうなっていくのか、わからないまま、この物語はひとまず締め括られるんです。起承転結の「結」に当たるその曲はツアーの初日から披露していこうかなと思ってます。
――それは気になる内容ですね。そのツアーは7月21日の仙台公演からスタートしますが、タイトルも今回のシングルと同じく<Dark fairy tale>と冠されていますね。メンバー自身も一連のライヴを楽しみにしているでしょうね。
HIDE-ZOU:そうですね。今回の新曲そのものもそうですし、既存の曲を織り交ぜたセットリストを楽しんでもらえたらと思いますね。久々に行く場所もあるので、しっかり観ていただきたいなと思います。
HIROKI: CDがリリースされてからのツアーなので、十分に聴き込んだうえで足を運んでくれると思うんですよ。だからこそ、この新たなる世界観を生でじっくり堪能してもらえるように、しっかりとした演奏を届けたいと思っています。
Ruiza:そうですね。新章ということだけでも、すごく楽しみですし、今回のヴィジュアルもすごく好きなんですよ。こういう黒い衣装も久しぶりな気がしてて、それを観てもらえるのも楽しみですね。
Tsunehito:ツアー・ファイナルを終えるまでがこの作品すべてだと思いますし、この深い世界観をライヴでぜひ楽しんでもらいたいですね。今のテーマは今しかないので、見逃さないで欲しいです。
ASAGI:このツアーに先駆けて、冒頭にも話したように、まず、妖精界と人間界が一番近づくと言われている夏至の日(6月21日)に発売記念ライヴができることも、すごく嬉しいんですね。妖精王の粉・妖精の粉の企画なんかもありますし。そこからはまたツアーをしますが、今回の楽曲でも表現しているように、儚い人生、一緒に過ごせる時間というのを大切に感じながらライヴをやりたいですし、この世界観を全力で伝えられるように頑張りたいですね。さらに言えば、5曲の新曲をセットリストに織り混ぜることで、これまでとは違った楽しみ方ができる曲も出てくると思うんです。是非みんなに集まってもらいたいですね。

取材・文/土屋京輔


2017.06.28 Release
Dark fairy tale 限定盤A-TYPE (CD+DVD)
CJ Victor Entertainment/ VBZJ-46/¥1,800(税別)/CD+DVD
SOLD OUT!!!
※店頭在庫分が無くなり次第販売終了

[CD]
1.Dark fairy tale/2.Bluebell wood/3.Dark fairy tale (Instrumental)/4.Bluebell wood (Instrumental)
[DVD]
1.「Dark fairy tale」 Music Video/2.「Dark fairy tale」 Music Video Making
Dark fairy tale 限定盤B-TYPE (CD+豪華ブックレット)
CJ Victor Entertainment/VBZJ-47/¥1,800(税別)/CD 
SOLD OUT!!!
※店頭在庫分が無くなり次第販売終了

[CD]
1.Dark fairy tale/2.Bluebell wood/3.慈愛の虜囚/4.慈愛の虜囚 (Instrumental)
※豪華ブックレット
Dark fairy tale 通常盤C-TYPE (CD)
CJ Victor Entertainment/VICL-37368/¥1,200(税別)/CD 
[CD]
1.Dark fairy tale/2.Bluebell wood/3.Who killed fairy?/4.Who killed fairy? (Instrumental)
Dark fairy tale 限定盤D-TYPE (CD+ステッカー)
CJ Victor Entertainment/VBZJ-48/¥1,500(税別)/CD 
SOLD OUT!!!
※店頭在庫分が無くなり次第販売終了

[CD]
1.Dark fairy tale/2.Dark fairy tale (Electrical midsummer night's Dream Ver.)/3.Dark fairy tale (Instrumental)
※妖精降臨仕様!ジャケットサイズステッカー封入(全5種ランダム)
…ステッカーにARアプリをかざすとメンバーが出現する特殊ステッカー!(ステッカーの絵柄のメンバーが出現します。)


D New Single「Dark fairy tale」発売記念ワンマンライヴ
「Dark fairy tale ~The midsummer night's Dream~」


6.21(水) 新宿BLAZE

※ ライヴ終演後「"妖精王の粉"/"妖精の粉" 手渡しプレゼント&握手会」開催決定
(「Dark fairy tale」CD予約者対象。 詳細はD OFFICIAL WEB SITE/Newsをご確認ください。



D TOUR 2017「Dark fairy tale」

7.21(金) 仙台CLUB JUNK BOX
7.23(日) 札幌cube garden
7.27(木) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
7.30(日) HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
8.2(水) 金沢AZ
8.4(金) 名古屋Electric Lady Land
8.6(日) OSAKA MUSE
8.12(土) 新横浜NEW SIDE BEACH!!
8.14(月) 岡山IMAGE
8.16(水) 広島SECOND CRUTCH
8.18(金) 福岡DRUM Be-1

[TOUR FINAL]
8.29(火) 赤坂BLITZ
※当日はご来場者全員に未発表曲音源(CD)プレゼント



D New Single「Dark fairy tale」発売記念
インストアイベントスケジュール(全日程)


6.24(土) タワーレコード八王子店
   「トーク&Blooming撮影会(2ショットチェキ)」
   イベント開始14:00~

6.25(日) タワーレコード吉祥寺店
   「トーク&Blooming撮影会(2ショットチェキ)」
   イベント開始19:00~

6.27(火) ライカエジソン東京店
   「トーク&サイン会」
   イベント開始19:30~

6.28(水) タワーレコード池袋店
   「握手&Blooming撮影会(2ショットチェキ)」
   イベント開始19:30~

6.29(木) little HEARTS.SHINJUKU [リトルハーツ新宿]
   「トーク&握手会」
   イベント開始19:30~

6.30(金) Brand X
   1部「トーク&ジャケットサイン会」
     イベント開始17:30~
   2部「トーク&私物サイン会」
     イベント開始19:30~
   ※1部・2部共トーク部分は人数制限有

7.1(土) タワーレコード渋谷店
   「トーク&Blooming撮影会(2ショットチェキ)」
   イベント開始14:30~

7.1(土) SHIBUYA TSUTAYA
   「Blooming撮影会(6ショットチェキ)」
   イベント開始18:00~

7.2(日) 渋谷ZEAL LINK
   「トーク&サイン会」
   イベント開始13:00~

7.2(日) タワーレコード新宿店
   「トーク&Blooming撮影会(2ショッ トチェキ)」
   イベント開始18:00~

7.20(木) タワーレコード仙台パルコ店
   「トーク&Blooming撮影会(2ショットチェキ) 」
   イベント開始19:00~

7.24(月) HMV札幌ステラプレイス
   「トーク&Blooming撮影会(2ショットチェキ) 」
   イベント開始19:00~

8.3(木) 名古屋ZEAL LINK
   「トーク&サイン会」
   イベント開始19:00~

8.5(土) タワーレコード名古屋近鉄パッセ店
   「トーク&Blooming撮影会(2ショットチェキ)」
   イベント開始12:00~

8.7(月) 大阪ZEAL LINK
   「トーク&サイン会」
   イベント開始15:00~

8.7(月) タワーレコード梅田NU茶屋町店
   「トーク&Blooming撮影会(2ショットチェキ) 」
   イベント開始19:00~

8.15(火) HMVイオンモール岡山
   「トーク&Blooming撮影会(2ショットチェキ) 」
   イベント開始19:00~

8.19(土) タワーレコード福岡パルコ店
   「トーク&Blooming撮影会(2ショットチェキ) 」
   イベント開始14:00~


※インストアイベント詳細、参加方法、注意事項についてはD OFFICIAL WEB SITE/Newsをご確認下さい。


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