2017.2.19 Ruiza solo works 「ONENESS」 @ 高田馬場AREA
2017.03.24

2月28日にリリースした3rd solo CD『ONE』の先行お披露目を兼ねた1st soloワンマンを敢行したDのギタリスト・Ruiza。“一緒に音を奏でたい”と感じて声をかけたサポートメンバー3人とともに繰り出したサウンドは、自由で刺激的な、まさにRuizaの人柄そのものだった。ハプニングすらもふんわりとしたアットホームな空気に変えてしまうRuizaマジックを、このレポートから感じてください。


Ruizaがsolo worksをスタートさせたのは、11年前の2006年。Solo CD『Amenity gain』をリリースし、2012年には2nd solo CD『abyss』を発表した。どちらもRuizaのギターをフィーチャーしたインストゥルメンタル作品で、女性ファンの多いヴィジュアル系において、楽器の音だけで勝負する作品を出すことはなかなか大胆な行動だと感じていた。そして2017年2月。5年ぶりに3枚目のsolo CDが世に放たれた。そして今回は、遂にワンマンライヴも実現。そもそもRuizaはインストゥルメンタルが大好きで、ゲームミュージックや映画のサウンドトラック盤といった音楽を小さい頃から楽しんでいたそう。ギターを手にするようになってからは、バンドの曲と並行して、ギターミュージックも自然と聴くようになったという。スティーヴ・ヴァイやジョー・サトリアーニなどを聴きながら、いつか自分もインスト作品を作ってみたいという夢をずっと思い描いていたとか。
Ruizaの長年の夢が詰まった1stワンマンは、Ruiza(G.)/刻(G.)/Natsuki(B.)/奏(Dr.)、メンバー4人がステージに揃った形、いわゆる板付き状態でスタートした。
「楽しむ準備はできてるかー!最後までよろしくな!」というRuizaの雄叫びで演奏がスタート。インストゥルメンタルのライヴに参加するのは初めてというお客さんも多いのだろう、客席に戸惑いのような空気も感じられた。けれど、そんな雰囲気も本当にごく最初だけ。M1『By Degrees』の2コーラス目に差しかかる頃には、腕を振り上げたり体を揺らしたりと、気持ちの良い音の洪水に身を任せるようになっていく。M2の『sphere』では、メンバー全員が頭の上で拍手!オーディエンスもそれに習って一緒に拍手!楽しい空気が会場を包んだと思えば、M3『faith』ではラウドなサウンドが爆発し、場内はヘドバンの嵐に。早弾きなど、テクニカルな見せ場も盛りだくさんなどあたま3曲で、初ワンマンとは思えない一体感が生まれつつあるのを感じた。
正直なところ……。筆者はインストゥルメンタルにはあまりなじみがなかった。スゴイだろうとばかりにテクニックを見せつけられると、観ているこちら側がなぜかイッパイイッパイになってしまって楽しめないと感じていたからだ。でも、今日はなんだか違う。細い体ながらズシンとしたリズムを刻むドラムの奏、安定感がありつつ華のあるベースを弾くNatsuki、Ruizaのギターをしっかりとしたバッキングとカッティングで立てつつ、時にハモリやソロフレーズでエモーショナルなギターを聴かせる刻。そのどれもが鼻につかないから、楽器に対する深い知識がなくても理屈抜きで楽しめる。どうしてそう感じるのか、その理由がほんの少しわかった気がしたのが、最初のMCでのRuizaの言葉だ。





「何を伝えようか、何を話そうかいろいろ考えたんですけど、上手くまとまりませんでした(笑)。なので今日は、思ったこと・感じたことを素直に話したいと思います。まず絶対に言おうと思ってたこと。今日は1stワンマンなんですけど、(2016年の)年末に、今日と同じメンバーでライヴをしようと思ってスケジュールを切っていました。僕、1stワンマンをやる時は、“ONE”というタイトルをつけたいなと思ってたんです。自分にとって1本目のソロワンマンであり、新しい一歩を踏み出すという意味でも“ONE”。ほかにもいろんな想いを込めてそうつけようと思ってたんですけど、そのライヴがキャンセルになって…。なので今日のライヴはそれ以上のタイトルをつけたいと思ったんです。サポートメンバー、そして今日来てくれたお客さんと一緒に自分が出来る唯一無二のライヴを作りたいと願って“ONENESS”というタイトルにしました」

「基本的にはインストゥルメンタルの曲でライヴが構成されているんですけど、次の曲ではギターで弾いたフレーズをみなさんに歌ってもらう形でコール&レスポンスをやります。声を出さないといけません。皆でひとつになりたいなと思っていろいろ考えて、これまでのソロでのライヴで経験してきた事も踏まえて皆で声を出して楽しめる「ONE」という曲を書きました」


ただギターを弾いて自分が気持ちよくなりたいという動機はRuizaにはほとんどない。自分がギターを奏でることで、みんなを楽しませて気持ちよくさせたいという想いがあるのだろうと彼の言葉を聞いて思った。そして、4曲目に披露した『ONE』でRuizaの想いは早くもその真骨頂を見せる。コール&レスポンスの練習を3回したところでNatsukiからもGOサインが出て本番へ。ギターの音色と同じ音階のコーラスが客席からステージに跳ね返り、Ruizaは満面の笑みを見せる。続いて、ブルージーな要素がある曲やピアノのイントロから始まるスローナンバーなど、幅広いタイプの曲を存分に聞かせて2度目のMCへ。ここでは、次に演奏する『Another』のエピソードを。MVを撮影したこの曲は、
「自分のやりたいことやいろいろと想像していることを表現できたらいいなと思って考えた曲」だという。アコギの優しい音色から始まったかと思えばラウドな音が加わり、またメロウになり……ミクスチャーといっても差し支えがないほどいろいろな要素が詰まった曲だ。歌という言葉を持つパートは、楽器の音色を統一して世界観をまとめ上げる役割があると思う。そのパートがない以上、要素にあふれた曲はややもするとバラバラになってしまうが、この4人はそうさせない。互いへのリスペクトがあってこそ、ブレることなく一本の筋が通った曲として生演奏ができているのだ。
M9は2nd solo CDに収録されている『abyss』。Ruizaサウンドの代表格といえるハード&パワーロックが炸裂するとなれば、オーディエンスも黙ってはいられない。前方からヘドバンの波がどんどんと会場に広がり、ものすごい熱気が場内を包む。その後、さらにタイプの違う2曲を演奏し、Ruizaは、次に演奏する『Round&Round』の説明を始めた。

「『Round&Round』は、“ぐるぐる回る”という意味なんですけど、みんな知ってた?(笑) 『amenity gain』とか、ライヴでは各パートのソロが入るアレンジをしているんですけど、この曲はそういうライヴっぽい要素がたくさん入った曲を作りたいと思ってできた曲です。タオルを振って、みんなで盛り上がれる曲です!」


全員でタオル回しの練習をしてから始まった『Round&Round』」は、ライヴの盛り上がりにふさわしいナンバーだ。この曲を演奏し終えたあと、Ruizaはその手応えをこう語った。

「ライヴ感を出したいと思って作ったんですけど、スタジオで演奏してても楽しくて。ライヴでやったら絶対楽しいだろうなと思ってて、実際にみんなの前で初めて演奏したけどすごくいい景色でした!ライヴをやってるとね、もっともっと盛り上がりたいなと思うし、ファンのみんなとぶつかり合ってすごいエネルギーを生み出したいなと思うわけです。次は『Resonance』をやろうと思うんですけど、初めて歌を歌いました。フゥ!緊張する!(笑)。自分で歌ってみて、ひとつ自分の殻がぽろっと取れた気がします。(自分にとって)初めて歌のある曲だし、今までの自分の音楽人生といいますか……自分は何を聴いて今のようなスタイルになってきたのかとか、いろんなことを遡ったりして。そのなかで、こういったヴィジュアル、黒い格好でやりたいなと思ったり。激しく熱い曲を作りたいと思ったので、その熱がみんなに伝わればいいなと思って作詞・作曲して完成しました。だから全力でぶつかってきてほしいわけですよ。激しい曲なので、みなさん大得意だと思うんですよね!」


「やっと届けられました。ありがとうございます!ライヴの雰囲気、ふわっとしてると思うんですけど、それも含めて俺です(笑)。今日、また新たな一歩が踏み出せたと思うので、この先もみんなの元に音を届けて活動していけたらいいなと思っています。早いもので次でラストです。始まりの曲というかね。一番最初にリリースした『Amenity gain』をやって最後にしたいと思います。最後、全力で演奏してますので、かかってこいよ!!」


イントロから超ド派手なサウンドが炸裂する『Amenity gain』。90年代のアメリカンロックを彷彿とさせるサウンドメイクは、Ruizaのギターが最も映えるナンバーだ。途中、メンバー一人一人のソロを挟んだ時には、ソロアーティストとサポートメンバーという関係を越えたような信頼感の強さを見せつけた。笑顔で客席にアピールしながらドラムを叩く奏。Natsukiが超絶早弾きベースを弾いたと思えば、それに負けない早弾きで刻が応戦。それを受けてRuizaは、
「なんなんですか、今の速弾きは(笑)。僕は僕なりに弾きます」と言って自身も速弾きのソロを弾く。演奏前に、Ruizaは、「時間はあっという間にすぎていく。悔いの残らないように時間を大切にして生きていけたらいいと思う」と言っていたが、まさに、最後の時間を惜しむかのように全力で『Amenity gain』をオーディエンスにぶつけ、記念すべき1stワンマンの幕を下ろした。




そしてアンコール。曲に入る前のRuizaのMC……長かった! グッズ紹介に始まり、メンバーひとりひとりを呼び込みながら彼らとのエピソードを紹介したり!相方ギタリストを務めた刻からは、
「なんで僕に声をかけてくれたのかなって。尊敬している人なので、おそれ多かったんですよ。“なんで僕!?”って」という質問が。これに対してRuizaは、「刻くんとはいっぱい対バンしてるんですけど、ギターがすごくうまいんです。超絶技巧を繰り広げるし、音楽理論にも精通してて、弾くフレーズがマニアックでね。そんな技を思う存分発揮してほしいと思って声をかけたんですよ」と答えた。この後登場したNatsukiは、「Ruizaさんがsolo worksで初めてライヴをやる時に声をかけていただいて。実はそのキッカケは、(DuelJewelの)ZEPP TOKYO(2016年2月13日の解散ライヴ)に来ていただいたからなんです。ちゃんと観てくれたうえで誘ってくれたんですよ。初めてやった時、すごく楽しくて、“次はワンマンですね!”と言ったんですが、それが実現できてうれしいなと思います」と話したが、Ruizaは、ちゃんとしたヴィジョンをもってメンバーチョイスをしている。だからこそ、パーマネントなバンドではないのに、信頼関係や一体感を生み出すことができるのだ。ちなみに、Ruizaがこの3人と一緒にやりたいと思った理由は…

刻:人柄やギターの技術も知っていたので、ライヴ活動の話が出た時にすぐに頭に浮かんだ。同じ曲をコピーしていたり、音楽的な趣味もきっと近いだろうと思った。
Natsuki:かなり前からお互い知ってはいたけれど、話をするようになったのは比較的最近。Dueljewelの解散ライヴでピアノソロを披露しているのを観て、“ああ、こんな音楽も好きなんだ”と知り、一緒に音を出してみたいなと素直に思った。
奏:いつも影ながら支えてくれていて、行動をともにすることもかなり多いので、いろんな話をします。同じドラマーが大好きで、ドラムの話だけで何時間もできてしまうぐらいドラムの趣味も近い。奏ならおもしろく叩いてくれそうだなと思った。


Ruizaの音楽に対する純粋な想いがあってこそ、普段は別々の活動をする4人の心と技術をひとつの形にすることができるのだろうと、MCや別途彼にもらったソロ展開に関するコメントから伺うことができる。
そして……。奏まで、全員の紹介が終わったところでこんなカミングアウトが。

「MC長いじゃないですか。正直に言うと裏でトラブルがあったんです。同期のデータが消えちゃって。奏が修復作業をしてくれて、復旧しました。ありがとう!普通、こういうことは言わないと思うんですけど、1stワンマンでどうしてもやりたい曲もあったので、なんとか頑張ってもらいました」

トラブル復旧の隙間を埋めるMC中、Natsukiが
「Ruizaさんという人を知ると、本当に良い方なんです。やさしいんですよ。ワンマンでこの雰囲気って、普通のバンドだと許されないと思うんです。Ruizaさんだから許されるこの空気感。Ruizaさんの人柄が出ててすごくいいなと僕は思うんですよね。インストゥルメンタル自体も独特なのかもしれないけど、この空気感でワンマンができるRuizaさん、すごいです」と話していたけれど、まさにその言葉通り、素直な気持ちを音と言葉に表わすRuizaが座長だからこそ、アットホームな雰囲気がこの日のライヴにはあった。だからこそ、冒頭に綴ったように、インストゥルメンタルでありながらも“ハードルの高さ”が皆無なのだろう。この後、無事復旧したサウンドシステムで、アンコール3曲を披露。途中、前日に誕生日を迎えたRuizaを祝うサプライズがあったりと、アットホームな雰囲気がたっぷり詰まったアンコールタイムとなった。

刻やNatsukiから
「ツアーをやってほしいと言われている」と、アンコール中のMCで語っていたRuizaだが、今のところは次の展開は未定だそう(現在は4月から始まるDの東名阪2部制ワンマンでのゲスト出演が決定!)。でも、ステージ上のメンバーやお客さんたちが見せたたくさんの笑顔に触れた今日のライヴを経験してしまったら、きっと、solo worksでの活動をリアルにプランニングせずにいられないだろう。演奏や楽曲の高いクオリティーでオーディエンスを楽しませることはもちろん、Ruizaらしいアットホームな雰囲気もクセになるsolo worksのライヴを通し、ギターの可能性、音楽の自由さをもっともっと広く伝えてほしいと思う。

Text : 須田真希子 Photography : TAKUYA ORITA  


2017.2.19 Ruiza solo works 「ONENESS」 @ 高田馬場AREA
-SET LIST-

-SE-
01. By Degrees
02. sphere
03. faith
04. ONE
05. Welter
06. Nemesis
07. Amethyst
08. Another
09. abyss
10. Serendipity~ONENESS Arrenge ver.~
11. Crepuscular rays
12. Round&Round
13. Resonance
14. Amenity Gain
<ENCORE>
01. Distortion
02. Round&Round
03. ONE

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